「木工療育」をやってみよう!木工による地域サポートの提言その1

〜何でもつくってみよう!ここにきて楽しもう!〜

●●●●● 一、はじめに ●●●●●

障害をもっていると、生活しているときにどんな不利や不便があるのでしょう?それは、接する人たちの気持ち次第でずいぶんと変わると思います。私にとっては、仕事柄「発達障害」をもったこども達はとても身近な存在です。ご家族と話していると、こどもたちが、学校などの生活場面でさまざまな困難に直面し、たくさんの不利な経験を積み重ねていることがわかります。こども達の時間の流れ、彼らのやり方を受け入れる人が少しずつでも地域に増えていくことがバリアフリーに近づく道と考えて、仲間作りに力点をおいた「木工療育教室 」を準備しています。

地域サポートの仕組み作りの一環として「場」を提供する仕組みをつくりたいと考えています。

●●●●● 二、「場」を提供する仕組みづくりとは ●●●●●

どの地域でも発達障害をもつこども達を知らない人の方が多いようです。出会った事はあってもつきあい方がわからない人もたくさんいます。遠目にみていたり、たいへんそうだなぁというまなざしだったりすることもあります。こうしたまなざしは、どうすれば和らぐのでしょうか。ここに2つのキーワードがあります。まず「出会い方」。障害をもつ人たちと、ふだんは接点がない人たちとが偶然以上の確立で、いい出会いを提供できると、その後も、コミュニケーションしやすくなるのではないものでしょうか?次に「積み重ね」。時間をかけてつき合い方の糸口をみつけていけるような仕組みが大切だと思います。

私たちは平成12年度、この二点を考慮して「木工療育教室」を実施しました。

●●●●● 二―(1) 出会い方 ●●●●●

偶然以上の確率で、日頃こども達と接点のない地域の人が、こども達に出会うようにするには、なにかテーマをもった「場」が必要です。もちろんテーマは、園芸、絵画、音楽、ハイキング等々多様で構いません。わたしたちは、その中から「木工」を選びました。

「木工」がテーマだとすれば、やはり、スタッフには、木工経験のある人がいて欲しいところです。でも、大工さんはじめ職人さん達が参加してくれると、心強い反面、心配もあるのです。誰もが直ぐに、発達障害をもったこども達と関わる糸口をみつけられるかどうかはわからないからです。せっかく機会を設けて出会っても、こども達の特徴が理解できずにコミュニケーションがすれ違ってはもったいないと思います。

少しでもいい出会い方をする、ということを述べたのは、こうしたすれ違いを少なくするという意味です。こども達の特徴について予備知識をもっておくとずいぶんその後が違ってきます。理解のある医師や、療育、教育関係者に、専門的な知識をかみ砕いてわかりやすく教えていただけるような「発達障害を理解するための基本的な勉強会」などを行うことはとても大切と思います。

子ども達に日頃から接している専門家や関係者には、その人の中では、こども達の良さを理解し、つきあうコツを見つけている人がたくさんいます。私たちは、そうした、つきあい上手な人から、多くのことを学ぶことができます。その人たちが見出しているコミュニケーションの機微を上手に聞き出し、社会に伝えていくことができれば、こども達のことを理解できる大人の数も確実に増えると思います。

違う言語を話す2つのグループの人たちが交流しようとするときに、いい通訳者に恵まれるとコミュニケーションはいっそう深まります。

木工経験者たちと、様々な苦手をもつこども達とが出会うときにも、いい通訳者の存在が必要なのではないでしょうか?

「木工経験者」は、「療育」のプロではないので、発達を踏まえた上で専門的に関わる必要はありません。同時に、「療育」のプロは、木工作業については素人でも構わないのです。

「療育経験者」の役割は、むしろ、木工職人さんとこども達とのコミュニケーションを仲立ちすることです。

人と人との「出会い方」にわざわざ「仕組み」をつくるということは、不自然かもしれません。でも、私たちはあえて、こうした「仕組み」づくりに取り組みます。

こうした事前準備をすることが、発達障害をもつこども達が地域のさまざまな場所で受け入れられる基盤をつくると考えるからです。「出会い方」をコーディネイトすることが理解者を増やす重要なポイントだと思います。

●●●●● 二―(2) 「積み重ね」 ●●●●●

こうした考えから、様々な苦手をもったこども達を対象とした木工教室は、「出会い方」の仕組みの視点から、事前に、木工経験者と療育経験者とが一緒に勉強会などを行ったり、こども達に作ってもらう内容を話し合うなどして交流を図りました。そして、こども達との出会いの日を心待ちにしながら、「教室」でつくる作品や、つくる過程について準備していきました。つくるテーマは、プランターに決定しました。

準備として、手応えが十分だったのは、「メッセージビデオ」です。
はじめての場所への参加に戸惑ったり、木工といっても何をどうしていいかイメージがわきにくい子どももいると予想されたので、実際に、1枚の板からカンナで削り鋸で挽き、こども達が当日使う部材にするシーンを撮影しました。また、作り方のポイントになりそうな作業のシーンも取り入れました。私たちが、こども達を待っていること、一緒に「木」でモノづくりをしようということが伝わるような内容にしてみたのです。

準備に時間をかけることができたので、実際の木工教室はとても和やかで楽しい場となりました。こども達の様子からは、「達成感」「楽しさ」「はじめての道具を使う緊張感」「人と一緒につくる楽しさ」など期待以上の反応が返ってきました。保護者の方たちからも、こうした創作活動が、親子のコミュニケーションにつながるとお感じになったようでしたし、なによりこども達のいきいきとした参加の様子をとても喜んで見ておられた。

このように、入念な準備をしたことで、「木工教室」自体は楽しい活動になることがわかりました。人と人とが、分かり合う過程というのは、出会ってたくさんのことを一緒に体験していって時間をかけて育っていくものだと思われます。発達障害をもったこども達の味方を増やしたくても、ことばで説明するだけでは実際のところ、理解に届くかどうかわかりません。発達障害ということはどんなことなのか関心をもってくれた人に対して、過不足なく情報を提供するのと同時に、いい出会い方が実現できたとしたら、そのあとも引き続き、その関係が続くような「仕組み」をつくっていきたいと思います。

●●●●● 三 「仕組み」づくり ●●●●●

発達障害をもったこども達が地域の中で、いろいろな人と関わりながら、参加できる場所、居心地のいい場所をみつけていくことをサポートするには、こども達のことを理解しながら、関わっていける人を増やしていく「仕組み」が大切だということを述べてきました。私たちは、たまたま、「木工」好きな仲間と、「こども」が大好きな仲間とが、それぞれの力を出し合って、さまざまな苦手をもっているこども達と一緒にたのしむ「木工教室」に取り組んでいるところです。「木工」でなくても、「園芸」「調理」「手芸」「絵画」「音楽」「スポーツ」いろんな活動が、考えられます。なにか「得意」をもった大人が、その楽しさや技術を伝えていくには、こども達を自分たちのレベルに合わせようとするよりも、自分たちの伝え方をみつめ、わかるように伝えるということが大切なんだと思います。

 それが、心のバリアフリーだと思います。

そのためには、準備の段階に、いろいろな人に関わってもらえるようにしていくことが大切でしょう。参加する大人にとって、参加することで何が得られるのでしょう?参加する人たちに還元できるものがあるのでしょうか?参加していく中で各自が何かを感じ取ってくれるように思いをめぐらしていきましょう。単なる人出不足の補充というような誘い方では、「積み重ね」は実現しないでしょうから。

「木工」という創作活動は、つきそう大人が、適度なサポートをすることで、こども達が次第に自分の力で、作り方になれていき、自分で作り上げていくことを体験できる場です。大人にとって、こども達とのつきあい方の距離の取り方を体得していく絶好の機会になります。時間の流れについてもしかりです。こども達とゆっくりつきあっていくことができれば、その子はずいぶんと自分を発揮できるようになります。多くの場合、集団生活のペースにのれず、かといって自分だけの時間の流れでは通用せず、という点で、苦労しているこども達が大勢います。

「木工」で一つの作品をつくっていくと、子どもによっていろいろなペースがあることがわかります。それでも、とことん、その子のペースに合わせていくと、満足するところまで自分を試していく姿に出会うことになります。基礎的な知識を一通りもつことは当然のことです。それを踏まえた上で、本当にこども達とのつきあい方について答えをくれるのは、実際の場面です。

大人も楽しみながらこども達の状態を理解し、こども達ひとりひとりに流れる時間のペースに気づくようになるとどんなにかいいでしょう。

●●●●● 四 まとめ ●●●●●

 こども達の状態を理解しつつ、関わっていける大人を増やすという目標を立てました。気づいた点をまとめます。

 理解しあえる「出会い」の場とその「積み重ね」。子ども達を既に理解している人が知っているコミュニケーションの秘訣を、引き出して、わかりやすく地域に伝えていくインタープリターの役割を明らかにしたいと考えています。


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